真島・伊澤研究室
東京科学大学 / フロンティア材料研究所 JP / EN
東京工業大学 / フロンティア材料研究所JP / EN
電子線リソグラフィにより線幅10nmの白金ナノギャップ電極を作製し、ヘテロエピタキシャル球状無電解金めっきの自己停止機能により、1つのチップ上に数百個のナノギャップ電極を作製し、ギャップ長を0.7nmに制御した、ナノギャップ電極作製に関する研究を行っています
電子線リソグラフィ(EBL)により作製した白金ナノギャップ電極のSEM像
研究室で所有する電子線リソグラフィ装置を用い、様々なナノ構造をCADで設計し、描画、蒸着、リフトオフを行うことにより、10nmスケールのナノコンビ電極を作製しています
白金電極は、500℃の耐熱性があります
我々はこのEBL技術を、ナノスケールガスセンサ、強誘電メモリ、ナノスケール強磁性体の研究に活用しています
白金(Pt)、パラジウム(Pd)表面に、ナノスケールの無電解金めっき(Electroless Au Plating: ELGP)をおこなっています。原子分解能SEM像から、格子縞が白金/金界面で連続しており、白金上に、金がヘテロエピタキシャル成長していることがわかります
このヘテロエピナノめっきは、室温で安全な溶液で行うことができます
Pd表面にも、金をヘテロエピ成長させることができます
これらのナノスケール金めっきは、厚膜めっきのシード層として利用することができます
白金ナノギャップ電極に、ヘテロエピ無電解ナノめっきを行うと、金が成長し、ギャップ長を狭めることができます
無電解ナノめっきでは、金を球状あるいは均一に成長させることができます
ギャップ長が数nm以下になると、ギャップ間に金イオンが入れなくなり、ギャップ間の金成長が止まる、無電解ナノめっきの自己停止機能を我々は確立しています
無電解ナノめっき(ELGP)の自己停止機能を用いて作製した、ナノギャップ電極を拡大すると、白金初期ギャップ部に金が球状にヘテロエピタキシャル成長していることがわかります
このナノギャップ電極のギャップ長は、0.7 nmであり、金原子3個分しかありません
金を白金上にヘテロエピ無電解めっきすると、ナノスケールで極めて安定な構造となっており、このナノギャップ電極は200℃の耐熱性があります
我々はこの無電解ナノめっき技術を、超高速トランジスタ、DNAシーケンサの研究に活用しています
数ナノメートルの量子ドットと、ヘテロエピ球状金/白金ナノギャップ電極を用いると、トンネル伝導をゲート変調により制御するトランジスタが実現します
トンネル伝導を変調するトランジスタは、素過程がフェムト秒のトンネル機構により電極間を横切るため、超高速動作が期待されます
我々は、金ナノ粒子を用いて理想的な動作をする単電子トランジスタを実現し、3入力の論理回路動作を報告してきました
π共役分子を半導体として用いたトランジスタが、単分子単電子トランジスタとして動作しています
現在、半導体量子ドットを用いた超高速トランジスタに関する研究を展開しています
ガスセンサはこれまでマイクロメートルスケールで製造されてきました
抵抗変化型ガスセンサは、一対の電極間に酸化物半導体をおき、ガス雰囲気により電気伝導が変化することによりガスを検出します
我々は、ナノメートルスケールのギャップ長を有する白金ナノギャップ電極をガスセンサに応用すると、応答速度などが桁違いに高速となる、ナノギャップガスセンサを構築できることを発見しました
我々はこのナノギャップガスセンサ技術を、ウエアラブルガスセンサや、超低消費電力ガスセンサなどへの応用展開に向けた研究開発をおこなっています
ナノポアシーケンサは、数nmの小孔(ナノポア)を通過する一本鎖DNAに対応するイオン電流の変化を読み取るDNAシーケンス手法で、長いDNAの解読できる次世代DNAシーケンサとして注目されています
これまでにタンパク質のナノポアが商用化されてきましたが、金属ナノポアを使ったDNA/RNAシーケンサは実現していません
我々は、EBL、無電解ナノめっき(ELGP)、MEMS手法を組み合わせ、ELGPの自己停止機能を用いたELGPナノポアDNA/RNAシーケンサの実現に向けた研究を展開しています
強誘電体メモリは電源を切ってもデータを保持できる不揮発性メモリとして、大きな注目を集めている。特に2次元(2D)ファンデルワールス(VdW)半導体材料のα相セレン化インジウム(α-In2Se3)は、原子スケールでの強誘電性や光電性、半導体性を有しているため、高速の不揮発性メモリ材料として理想的である。しかしこれまでのα-In2Se3メモリは、ギャップ長がマイクロメートルオーダーで、α-In2Se3上にソース/ドレイン電極を形成するトップコンタクト型であったため、チャネル部が面内分極反転する不揮発性α-In2Se3メモリは実現していなかった。
我々は、ギャップ長100 nmのナノギャップからなるソース/ドレイン電極上にα-In2Se3を転写する、ボトムコンタクト型強誘電体メモリ構造を採用し、ドレイン電圧で抗電界に匹敵する横方向電界をチャネル間に印加し、面内分極反転に基づく強誘電半導体不揮発性メモリを実現した。今後、面内分極を利用した幅広いメモリ応用が可能である。
強誘電体メモリは、自発分極の電界印加時のヒステリシス特性による正負の残留分極を用いた不揮発メモリです
我々は、EBLを用いてナノコンビ電極を作製し、ナノスケールの強誘電体メモリの実現に向けた研究を展開しています
L10型結晶構造を有する磁性合金は、CoPtやFePtなどの大きな垂直磁気異方性を示す材料です
L10強磁性体では、結晶のc軸方向に交互に原子が積み重なっており、c軸方向の結晶格子が縮むことにより磁気異方性エネルギー(MAE)が変化し、大きな磁気異方性が実現しています
我々は、CoPtナノワイヤをEBLにより作製し、ナノ構造における極めて大きな応力によりL10規則化を誘起させる、ナノ構造誘起規則化L10強磁性単結晶ナノワイヤの作製に成功し、これを用いたスピンデバイスの研究を展開しています
ドナー分子とアクセプター分子の固体界面に励起子が到達すると、電荷分離により自由電荷が生成することが知られています。有機半導体界面で生じる電荷分離を利用して、励起状態のスピンを反転させることで、光アップコンバージョン(UC)という現象が実現できることを初めて明らかにしています。右写真のように、目に見えない近赤外光を我々が作った有機膜に照射すると、黄色の発光が得られます。UCは太陽電池の効率向上や生体内光治療などへの応用が期待されます。
有機ELはスマートフォンやテレビなどに使われて既に実用化されています。しかし、発光させるために必要な電圧が大きいことが、ディスプレイの省エネルギー化に向けた課題です。界面を使った新しい発光原理を実現することで、写真のように乾電池1本つなぐだけで有機ELを発光させています。これは世界最小電圧で光る有機ELであり、実用化に向けてさらなる発光効率の向上に取り組んでいます。
有機太陽電池は、環境にやさしい次世代のエネルギー変換素子として注目されています。その発電プロセスで特に重要となるドナー分子とアクセプター分子の界面で起こる電荷分離のメカニズムを解明することで、有機太陽電池の高効率化を目指しています