真島・伊澤研究室
東京科学大学 / フロンティア材料研究所 JP / EN
東京工業大学 / フロンティア材料研究所JP / EN
数ナノメートルの量子ドットと、ヘテロエピ球状金/白金ナノギャップ電極を用いると、トンネル伝導をゲート変調により制御するトランジスタが実現します
トンネル伝導を変調するトランジスタは、素過程がフェムト秒のトンネル機構により電極間を横切るため、超高速動作が期待されます
我々は、半導体プロセスである電子線リソグラフィと独自の無電解金めっき(ELGP)を組み合わせて、非常に安定なナノギャップ電極を作製する技術をこれまでに開発し、現在、π共役系分子を用いた単分子共鳴トンネルトランジスタの研究を展開しています。3 nmの大きさの一つの分子を半導体として用いるトランジスタが、当研究室では動作しています
JST CREST 光配向単分子架橋共鳴トンネルトランジスタのシステム機能化
ガスセンサはこれまでマイクロメートルスケールで製造されてきました
抵抗変化型のガスセンサは、100nm以下のスケールで基板上に電子線リソグラフィを用いて作製すると、ガス感応材料が秘めたポテンシャルを引き出し、応答速度、回復速度、感度が向上します
我々は、パラジウムナノワイヤ水素ガスセンサ、酸化物半導体ナノワイヤナノギャップガスセンサを研究開発しており、応答速度、回復速度が桁違いに高速となり、極めて微量なガスを検出することができることを発見しました
我々はこのナノスケールガスセンサ技術を、水素社会の実現、ウエアラブルガスセンサや、超低消費電力ガスセンサなどへの応用展開に向けた研究開発をおこなっています
安全な水素社会を支えるための技術とは
超高感度ナノワイヤナノギャップガスセンサの開発に成功
ナノポアシーケンサは、数nmの小孔(ナノポア)を通過する一本鎖DNAに対応するイオン電流の変化を読み取るDNAシーケンス手法で、長いDNAの解読できる次世代DNAシーケンサとして注目されています
これまでにタンパク質のナノポアが商用化されてきましたが、金属ナノポアを使ったDNA/RNAシーケンサは実現していません
我々は、EBL、無電解ナノめっき(ELGP)、MEMS手法を組み合わせ、ELGPの自己停止機能を用いたELGPナノポアDNA/RNAシーケンサの実現に向けた研究を展開しています
無電解金めっきナノポア温度可変シークエンサーによる長鎖DNA・RNA・ペプチドの解読
強誘電体メモリは電源を切ってもデータを保持できる不揮発性メモリとして、大きな注目を集めている。特に2次元(2D)ファンデルワールス(VdW)半導体材料のα相セレン化インジウム(α-In2Se3)は、原子スケールでの強誘電性や光電性、半導体性を有しているため、高速の不揮発性メモリ材料として理想的である。しかしこれまでのα-In2Se3メモリは、ギャップ長がマイクロメートルオーダーで、α-In2Se3上にソース/ドレイン電極を形成するトップコンタクト型であったため、チャネル部が面内分極反転する不揮発性α-In2Se3メモリは実現していなかった。
我々は、ギャップ長100 nmのナノギャップからなるソース/ドレイン電極上にα-In2Se3を転写する、ボトムコンタクト型強誘電体メモリ構造を採用し、ドレイン電圧で抗電界に匹敵する横方向電界をチャネル間に印加し、面内分極反転に基づく強誘電半導体不揮発性メモリを実現した。今後、面内分極を利用した幅広いメモリ応用が可能である。
新記録方式による高密度次世代不揮発性メモリ
強誘電体メモリは、自発分極の電界印加時のヒステリシス特性による正負の残留分極を用いた不揮発メモリです
我々は、EBLを用いてナノコンビ電極を作製し、ナノスケールの強誘電体メモリの実現に向けた研究を展開しています
L10型結晶構造を有する磁性合金は、CoPtやFePtなどの大きな垂直磁気異方性を示す材料です
L10強磁性体では、結晶のc軸方向に交互に原子が積み重なっており、c軸方向の結晶格子が縮むことにより磁気異方性エネルギー(MAE)が変化し、大きな磁気異方性が実現しています
我々は、CoPtナノワイヤをEBLにより作製し、ナノ構造における極めて大きな応力によりL10規則化を誘起させる、ナノ構造誘起規則化L10強磁性単結晶ナノワイヤの作製に成功し、これを用いたスピンデバイスの研究を展開しています
ナノ構造誘起単結晶化法による強磁性ナノワイヤ
ドナー分子とアクセプター分子の固体界面に励起子が到達すると、電荷分離により自由電荷が生成することが知られています。有機半導体界面で生じる電荷分離を利用して、励起状態のスピンを反転させることで、光アップコンバージョン(UC)という現象が実現できることを初めて明らかにしています。右写真のように、目に見えない近赤外光を我々が作った有機膜に照射すると、黄色の発光が得られます。UCは太陽電池の効率向上や生体内光治療などへの応用が期待されます。
有機ELはスマートフォンやテレビなどに使われて既に実用化されています。しかし、発光させるために必要な電圧が大きいことが、ディスプレイの省エネルギー化に向けた課題です。界面を使った新しい発光原理を実現することで、写真のように乾電池1本つなぐだけで有機ELを発光させています。これは世界最小電圧で光る有機ELであり、実用化に向けてさらなる発光効率の向上に取り組んでいます。
有機太陽電池は、環境にやさしい次世代のエネルギー変換素子として注目されています。その発電プロセスで特に重要となるドナー分子とアクセプター分子の界面で起こる電荷分離のメカニズムを解明することで、有機太陽電池の高効率化を目指しています